代表者 : 小林 達彦
2021.09.30
カルミン酸は、コチニールカイガラムシという甲虫の一種が作る天然の赤色色素で、食品や化粧品、医薬品の着色に広く利用されています。この色素は、糖が炭素-炭素(C-C)結合した化合物群C-配糖体の一つで、そのC-C結合は極めて安定なため、自然環境中でどのように分解されているのかは不明でした。
本研究では、筑波大学周辺の土壌から、カルミン酸を分解するバクテリアを発見しました。このバクテリアは、まずカルミン酸の糖を酸化し、その後、C-C結合を分解します。その際の酸化反応を触媒する酵素を同定し、CarAと名付け機能解析を行いました。
CarAは、糖を酸化する酵素のグループに属し、C-配糖体を基質とする新規な酵素でした。また、CarA以外に、別のバクテリアから遺伝子クローニングした2種類のホモログ(複数の生物種で類似する)酵素についても、同様の働きが見られることを明らかにしました。データベース検索により、さまざまな微生物がCarAホモログを有することが判明し、C-配糖体代謝において、C-配糖体3’-オキシダーゼ(CarAホモログ)による糖の酸化が、初発反応として広く一般的に見られることが示唆されました。
さらに、これらのホモログ酵素の一つについてのX線結晶構造解析により、このC-配糖体3’-オキシダーゼの反応機構が立体構造に基づいて提唱されました。
今後、他の代謝酵素も同定することにより、C-配糖体代謝の全容を解明していく予定です。