代表者 : 濱田 理人
2021.11.10
飲酒が肝炎や肝硬変の原因となることはよく知られていますが、飲酒をしなくても、脂肪肝から肝臓の病気が進行することがあります。この状態は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼ばれ、自覚症状が無いにも関わらず肝硬変や肝癌の原因になります。日本ではおよそ300万人がNASHに罹患し、そのうち15万人が肝硬変や肝細胞癌を発症すると想定されます。
しかしながら、どのようにNASHが発症するのかは未だ分かっていません。そのため、動物モデルを利用し、偏った食生活や遺伝的背景などさまざまな要因を調べる研究が行われていますが、これまでのモデルの多くでは、NASHの発症を誘導するために一か月~一年という長期間が必要であるため、発症メカニズムを詳細に調べることが困難でした。
本研究グループは、先天的にメラニン色素が欠乏したアルビノ化を引き起こすチロシナーゼ遺伝子に着目し、この遺伝子に変異を持つアルビノマウスに高コレステロール食を与えると、わずか三日間で肝臓における脂質の蓄積、肝細胞の肥大、炎症細胞の浸潤、線維化等が起こり、ヒトのNASH病態がよく再現できることを発見しました。このマウスは、世界で最も短期間でNASHを発症するマウスモデルとして、NASH発症の遺伝的メカニズムの解明、新規の治療法の開発に活用されると期待されます。また今後、チロシナーゼ遺伝子とNASH発症の関連を調べることで、民族間でNASHの発症率が異なる原因などを説明できる可能性があります。