夫婦は同じ生活習慣病に家族みんなで生活改善を

代表者 : 田宮 菜奈子  

夫婦は同じ生活習慣病になりやすい。杉山雄大 准教授(医学医療系)、田宮菜奈子教授(同)らの研究チームは、国民生活基礎調査のデータを解析し、このような結論を導いた。生活習慣病対策には、患者と家族が一緒に食事や運動などの生活を改善したり、健康診断を受けたりすることが重要だと言えそうだ。 生活習慣病は、食事や運動、喫煙、飲酒などの生活習慣が関与し、発症の原因となる病気の総称だ。動脈硬化や糖尿病、高血圧、脂質異常症などが代表例で、日本人の死亡原因の約6割を占める。また、遺伝的な要因も発症に関係することが知られている。 夫婦は多くの場合、遺伝的なつながりはないが、同居して同じ食事を取るなど、互いの生活習慣に影響を与えあう。このため、配偶者が生活習慣病だと、本人も生活習慣病を発症するリスクが高くなると考えられる。英国や中国では、これを裏付ける研究が行われていたが、日本では全国規模の研究がなかった。 杉山准教授らは、厚生労働省が16年に実施した国民生活基礎調査の匿名回答データを利用し、共に40歳以上の夫婦8万6941組を分析対象とした。 40歳以上としたのは、生活習慣病予防のため、国が実施する特定健診(メタボ健診)の対象だからだ。 高血圧、糖尿病、脂質異常症の三つの疾患について回答を解析したところ、夫がそれらの疾患で治療を受けている妻は、夫が治療を受けていない妻と比べ、同じ疾患で治療を受けている割合が高いと分かった。 次に、夫婦の居住場所や経済状況、妻の年齢・学齢・飲酒・喫煙などの影響を調整した上で詳しく比較した。 その結果、夫が各疾患で治療を受けている妻が同じ疾患で治療を受けるリスクは、夫がその疾患で治療を受けていない妻と比べ、高血圧で1・79倍、糖尿病で1・45倍、脂質異常症で2・58倍となった。三つの疾患いずれでも、夫が治療を受けている場合、妻も同じ病気にかかる傾向があるということだ。 研究チームは今後、別のデータを用いても同様の結果が得られるかを確かめ、生活環境と各疾患とのより詳細な因果関係を調べる。 杉山准教授によれば、日本では、医師が患者に対し、両親や兄弟など血縁者の生活習慣病の有無を聞くことはあっても 、配偶者について聞くことは少なかったという。杉山准教授は「この研究が、生活習慣病を持つ夫婦の共同治療プログラムの開発など、新たなアイデアを生み出す発端となればいい」と話した。