ベトナムにおけるコーヒーノキ葉さび病の発生起源と移動経路を解明

代表者 : 岡根 泉  

ベトナムにおけるコーヒー栽培は、1857年にアラビカ種のコーヒーノキがベトナム北部にもたらされたのが始まりです。その後、栽培地域は南部へと広がり、現在では、ブラジルに次いで世界第2位の生産量になっています。その一方で、真菌類によるコーヒーノキの深刻な病気の一つである「コーヒーノキ葉さび病」による被害が、1890年以降、拡大しています。しかしながら、この病気がベトナム国内で発生・拡散したプロセスや、病原菌の生物学的特性に関する研究は、これまで行われていませんでした。

本研究では、ベトナムの多くのコーヒー・プランテーションから病原菌を採集し、DNA塩基配列に基づく分子系統学・集団遺伝学的調査を行いました。その結果、ベトナムでの本病の発生が、北西部を起源として南部へ広がったことが明らかとなりました。また、これとは別に、ベトナムのコーヒー主要生産地の一つである南部の中央高原を起源とした病原菌集団が確認され、南部ではこれが拡大している可能性が示されました。中央高原には、1900年代初めにロブスタ種が導入されており、その際に、この病原菌集団が移入したと考えられます。

今後、より網羅的なDNA塩基配列情報に基づいた解析を進め、本菌の遺伝的構造、集団動態、起源、移動経路などを明らかにする予定です。本研究成果は、コーヒーノキ葉さび病のリスクマネジメントを通して、世界各地におけるコーヒー栽培に貢献することが期待されます。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学生命環境系
岡根 泉 准教授

茨城大学教育学部
小野 義隆 名誉教授