海洋プレートが大陸プレートに潜り込む沈み込み帯は、地震の主要な発生場となります。沈み込み帯においてプレートにかかる力の様子やプレートの形状を明らかにすることは、地震の発生機構やプレート運動を理解する上で不可欠です。しかしながら、沈み込む海洋プレート (スラブ) の形状やスラブ内の応力状態は、地下深くに位置することから、そもそも観測することが難しく、大部分が不明のままでした。
本研究では、2021年3月にニュージーランド北部沖合で発生したマグニチュード(M)7.3のスラブ内地震を解析し、スラブの深部から浅部にかけて逆断層、横ずれ断層、正断層破壊が混在する極めて複雑な地震破壊が発生したことを明らかにしました。発見したスラブ深部における逆断層・横ずれ断層破壊は、通常予想されるプレートの沈み込み方向に沿った単純な応力状態では説明することができません。更に解析を進め、こうした破壊過程が生ずるには、スラブ深部の海洋プレートが通常の沈み込み方向に90度直交するような「たわみ」形状を持つ必要があることを見出しました。
本研究により、従来は数値計算などによって推定していたスラブの形状や応力状態を、地震発生を通して観測する道筋を提示することができました。地球のダイナミックな動きを司るプレートテクトニクスの理解を深化させる新たな知見です。またスラブ内地震は、しばしば強い振動や構造物被害をもたらすことが知られています。地震発生を直接コントロールするスラブの形状を明らかにすることは、将来起こりうるスラブ内地震やそれに伴う被害を評価する上で重要です。今後は、日本をはじめとする世界のスラブ内地震を解析することで、複雑なスラブ内地震の発生機構と謎が多いスラブの姿を明らかにすることを目指しています。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学生命環境系/山岳科学センター
奥脇 亮 助教