代表者 : 釜江 陽一
近年、日本では毎年のように広い範囲で豪雨が発生しています。このような豪雨は、「大気の川」と呼ばれる大規模な水蒸気の流れ込みが生じた際に引き起こされることがあります。また、豪雨の発生頻度や強度は、地球温暖化の進行によって増していくと考えられています。本研究では、東アジアを対象とした解像度の高い気候モデルを用い、日本で発生する豪雨の発生頻度と強度の地球温暖化による変化と、これにおける大気の川の役割を明らかにしました。
多量のシミュレーションの結果、日本では地球温暖化によって豪雨の発生頻度と強度が増すとともに、現在は確認されないような「経験したことのない大雨」が生じることが分かりました。その多くは、大気の川が通過することで引き起こされることが明らかになりました。特に、地球温暖化が進むと、台風の接近が少ない春季に、これまで春季には生じたことのない豪雨が生じ、その約9割が大気の川によって生じると見積もられました。
大気の川が豪雨をもたらす要因であることは、欧州や北米西岸では以前から知られていましたが、近年、日本を始めとする東アジアでも、同様の現象が生じていることが指摘されています。本研究により、地球温暖化の進行に伴い、大気の川は東アジアにより頻繁に、より強い豪雨をもたらす可能性が示唆されました。
台風とは異なり、大気の川がもたらす豪雨は、同じ場所で数日間続く場合があります。大気の川の活動とそれによる豪雨の特性の理解を深めることは、激甚化する災害への対策にも貢献できると期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学生命環境系
釜江 陽一 助教
気象研究所
川瀬 宏明 主任研究官