代表者 : 中野 裕昭
無腸類は肛門、体腔、腎臓などの排出器官を欠いた非常に単純な体制を持つ海産の無脊椎動物です。日本国内からはこれまでに無腸類が約10種報告されていますが、実際は100種程度生息していると推測されています。無腸類の研究により、新口動物や左右相称動物の祖先や進化について明らかになると期待されていますが、あまり研究が進んでいません。
本研究では、日本沿岸の複数箇所から、体長1~5 mm程の無腸類の一種を採集しました。採集した無腸類は、他の無腸類には見られない、長いアンテナ状の突起を背部中央に持ちます。ほとんどの個体で1本でしたが、2本突起をもつものもいました。その行動を観察したところ、この背面突起は水流などを感じる感覚器であり、この無腸類の獰猛な捕食行動の際に利用されていることが示唆されました。 また、この無腸類の形態や行動、および卵からの発生過程を記録するとともに、分子系統解析も行いました。これらの結果から、本種は無腸類Convolutidae科Amphiscolops属の未記載種であると判断されたので、背面突起を鬼のツノに見立ててAmphiscolops oni(和名:オニムチョウウズムシ)という学名で、新種として報告しました。 今後は、本種の名前の由来にもなった背面突起に特に注目し、本当にこれは感覚器なのか、どのような進化過程でこの新たな器官を獲得したのか、などの研究を進める予定です。
本研究成果は、2022年2月に出版予定である科学雑誌Zoological Scienceの、日本の沿岸生物の多様性をテーマとした特集号に掲載されます。本特集号では、10種以上の新種が報告される予定です。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学生命環境系
中野 裕昭 准教授