食物繊維を多く摂る人は要介護認知症の発症リスクが低下する

代表者 : 山岸 良匡  

食物繊維は穀類やいも類、野菜、果物などに多く含まれる栄養成分で、腸内細菌にも影響を与えることが知られています。近年、腸内細菌は、消化管の病気だけでなく、認知機能にも関与している可能性が、実験などにより示されています。しかし、実際に多くの人々を集めて、食物繊維の摂取量とその後の認知症になりやすさとの関連を調べた研究は、これまでありませんでした。

本研究では、国内の3つの地域における住民約3700人を最大21年間にわたって追跡調査し、中年期に食物繊維を多く摂ることで、高齢期の要介護認知症の発症リスクが低下する可能性を、世界で初めて明らかにしました。聞き取りによる食事調査により、ある1日の食事中に含まれる食物繊維摂取量と要介護認知症リスクとの関連を分析したところ、食物繊維摂取量が上位25%の群は、下位25%の群と比べ、要介護認知症発症多変量調整ハザード比は0.74であり、統計学的に有意な関連が認められました。これは、食物繊維を多く食べる人は、認知症にかかる確率が約3/4になることを意味しています。食物繊維の摂取が腸内細菌の構成に影響を与え、神経炎症を改善したり、他の認知症危険因子を低減することにより、認知症発症リスクを低下させる可能性が考えられており、本研究結果は、認知症予防に役立つ知見の一つになり得ます。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学医学医療系
山岸 良匡 教授