吸入麻酔薬には全身炎症時の睡眠サイクルを改善する効果もある

代表者 : 神林 崇  

感染症などで全身に炎症が起こると、ノンレム睡眠が増え、レム睡眠が減り、正常な睡眠サイクルが乱れることが知られています。一方、吸入麻酔薬のセボフルランは、麻酔以外にも、さまざまな臓器を虚血や炎症による障害から保護する作用があることが、近年の研究から明らかになっています。

本研究では、マウスにあらかじめセボフルランを吸入させておくと、その後に全身炎症により睡眠サイクルが乱れても、正常な睡眠サイクルが有意に早く改善することが明らかになりました。特にレム睡眠に関しては、セボフルランの前投与により、量的にも質的にも顕著な改善が見られました。

また、免疫組織化学染色法を用いてレム睡眠の回路を構成する神経核の活動を調べたところ、脚橋被蓋核・外側被蓋核の神経活動が、セボフルラン投与群では非投与群と比較して高いことが分かりました。セボフルランを投与すると、全身炎症時には低下する神経核の活動が正常時と同じレベルに保たれることが、睡眠改善に寄与していると考えられます。

睡眠障害の改善は免疫や認知機能の改善にもつながることから、本研究結果は、全身炎症を伴う手術後の睡眠障害やせん妄、集中治療後症候群(PICS)などの予防・治療に応用できる可能性があります。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)
神林 崇 教授