ノリが良いリズムに親和性が高い人はリズムを聴くだけで脳の実行機能が高まる

代表者 : 征矢 英昭  

ノリの良い音楽を聴くと、ヒトは楽しさや興奮が増し、リズムに合わせて思わず身体を揺らしてしまいます。リズムを聴いて身体を動かしたくなるこの感覚は、グルーヴ感と呼ばれています。

有酸素運動は、軽い強度であっても脳の前頭前野背外側部(DLPFC)を刺激し、その実行機能(注意・集中・判断など)を高めます。本研究チームは最近、運動に好きな音楽に合わせることでポジティブな気分が高まると、その効果が高まることを見いだしました。また、グルーヴ感は運動と相性が良いため、運動の楽しさや脳への有益性をより引き出せるのではないかと注目し、研究を続けてきました。

本研究では、グルーヴ感を引き起こすリズム(グルーヴリズム、GR)に対する親和性が高い人は、GRを聴くだけで、運動をせずとも前頭前野が刺激され、実行機能が高まることを見いだしました。

研究対象としたのは18~26歳の健康な男女51人です。グルーヴ感がもたらされやすいとされるドラム音楽をGRとして用い、前頭前野機能への効果を検証しました。その結果、対象者の中でもGRを聴いてグルーヴ感とポジティブな心理状態が共に大きく高まったグループでは、実行機能と左DLPFCの刺激効果が有意に高まることが分かりました。さらに、この効果は、被験者全体でみてもグルーヴ感とポジティブな心理状態が高まるほど大きくなる関係にありました。GRが前頭前野を刺激し実行機能を高める効果が明らかとなったのは、今回が初めてです。

運動を継続するのは至難の技です。我が国でも運動習慣者の割合は3割弱とされており、誰もが自然に取り組める運動プログラムの開発が急務となっています。本研究成果に基づき、グルーヴリズムに合わせた運動の効果検証を行うことで、脳機能の向上効果をより引き出す豊かな運動環境の提案につながることが期待されます。

PDF資料
プレスリリース

研究代表者
筑波大学体育系/ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP)
征矢 英昭 教授

北海道医療大学看護福祉学部/全学教育推進センター
福家 健宗 助教