代表者 : 新井 哲明
軽度認知機能障害(mild cognitive impairment: MCI)はアルツハイマー型認知症などの認知症の前駆状態と定義されており、アルツハイマー型認知症の早期発見・治療にとって非常に重要な時期です。運動療法や脳トレ、音楽療法など多くの活動を取り入れた多要素デイケアが、認知機能に良い影響を与えることは知られていましたが、この際に生じる局所脳血流量の変化についてはこれまでにあまり検討がなされておらず、その効果のほどは定量的には明らかにされていませんでした。
本研究では、筑波大学附属病院で行われている多要素デイケアを利用しているMCIの人を対象に、2年程度の間隔を空けて2回ほど脳血流検査(single positron emission computed tomography: SPECT)を行いました。ここから、経年により局所脳血流量がどれほど低下したかを計算し、多要素デイケアへの出席率との関係を調べました。その結果、出席率が高いほど右頭頂葉領域の局所脳血流量の低下量が小さいという相関関係があることが分かりました。
アルツハイマー型認知症では頭頂量領域に障害が生じることがすでに知られています。多要素デイケアに高頻度で参加することで同部位の変化が小さく抑えられたことから、デイケアによる脳血流量の低下予防効果が明らかとなりました。本研究結果は、年単位での継続的なデイケア参加者に対する介入結果をSPECTで評価した世界で初めての事例であり、多要素デイケアの認知症予防効果を示唆するものです。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学 医学医療系
新井 哲明 教授