イモリの筋線維再生の基本原理を解明~変態と成長が脱分化の封印を解く~

代表者 : 千葉 親文  

イモリには、一生を通じて肢を再生する能力が備わっています。例えば肢の筋に着目すると、アカハライモリの幼生は、筋幹細胞や筋前駆細胞が再生部の新たな筋を創り出します。一方、変態して成長したアカハライモリでは、切断した肢の多核筋細胞(筋線維)の一部が単核の細胞となって本体の筋線維から分離(この現象を「脱分化」と呼びます)、移動、増殖して再生肢の新たな筋を創り出します。

しかし、変態と成長のいずれが筋線維の脱分化に不可欠な要因なのかは明らかにされていません。

本研究では、イモリの変態と成長を人為的にコントロールした条件下で、肢再生過程における筋線維の挙動を追跡しました。その結果、筋線維の脱分化には、体の変態と成長の組み合わせが必要であることが明らかになりました。さらに、変態前の幼生の筋を体外に取り出し、筋線維の挙動を培養下で追跡したところ、変態前の筋線維にも脱分化能力があることが分かりました。

これらの結果は、イモリの筋線維が生来、脱分化能力を持っていること、しかしその能力が発揮されるためには体の変態と成長の両方が必要であることを示しています。

本研究成果は、イモリが持つ高度な脱分化能力の基本原理を解明し、将来の再生医療への応用に向けた技術開発に貢献するものと期待されます。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学生命環境系
千葉 親文 教授

名古屋大学アイソトープ総合センター
竹島 一仁 准教授(研究当時)