雪やビスマス結晶のように、結晶には凹多面体形状で特徴づけられる「骸晶(がいしょう)」と呼ばれる一群が存在します。急速な結晶成長プロセスで形成される骸晶は、従来の緩やかな成長プロセスでは表出し得ない結晶面や複雑な形状を有しています。骸晶形成の精密な制御ができれば、結晶材料に潜在する新たな機能の発掘が期待できます。しかし、骸晶はその急速な結晶成長様式のために、形状や大きさ、配向性をそろえることは困難です。
本研究では、面キラリティをもつ共役系有機分子を基板表面で自己組織化させることにより、同一形状で均一サイズ、かつ一軸配向したお椀型多面体マイクロ単結晶(骸晶)の作製に成功しました。このお椀型マイクロ結晶は、基板表面にわずか10秒程度で一斉に形成します。また、溶液濃度の調整やキラリティの選択により、より複雑で精緻なお椀型多面体形状の結晶を形成することができ、得られた凹多面体マイクロ結晶は、実際に溶液を保持する微小な器として機能します。さらには、多環式芳香族炭化水素を模した結晶の敷き詰め構造の形成も可能です。
本研究成果は、分子の自己組織化により凹多面体マイクロ骸晶の形成を基板上で均一かつ精密に制御した先駆的な例であり、特に有機マイクロフォトニクス応用に向けた汎用性の高い有機マイクロ結晶形成戦略を提供します。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学数理物質系
山本 洋平 教授
山岸 洋 助教
関西学院大学生命環境学部
森崎 泰弘 教授