認知機能が衰えるほど神経ネットワークが機能しなくなりバランス障害が顕著になる

代表者 : 新井 哲明  

アルツハイマー型認知症は認知機能障害だけでなく歩行やバランスといった運動機能の障害も起こることが指摘されています。運動機能障害は、アルツハイマー型認知症の前駆期である軽度認知機能障害(mild cognitive impairment: MCI)から出現しますが、バランス機能と認知機能の関連やそのメカニズムについてはよく分かっていませんでした。

そこで本研究では、アルツハイマー型認知症とMCI患者を対象に、認知機能検査およびバランス検査を行い、両群のバランス機能の差や認知機能との関連を調査しました。頭部MRI検査が得られた患者については、脳神経ネットワーク指標を算出してバランス機能との関連を確認し、バランス障害が生じるメカニズムを検討しました。

その結果、バランス障害は、MCI群に比べてアルツハイマー型認知症群で顕著であり、両群に共通して、認知機能障害が重度になるほどバランスが不良となることが分かりました。また、脳神経ネットワーク指標からは、バランス障害が重度なほど、脳の海馬を経由する神経ネットワークが障害されていることが明らかになりました。

海馬は空間認知や方向感覚において重要な役割を果たしており、アルツハイマー型認知症においては、海馬障害が早期から出現し、疾患進行に伴い顕著となることから、本研究結果は、アルツハイマー型認知症による海馬障害が、バランス障害を引き起こすことを示唆しており、バランス障害が、MCIからアルツハイマー型認知症への進行を検出するための、有用なマーカーになり得ると考えられます。

PDF資料
プレスリリース

研究代表者
筑波大学医学医療系
新井 哲明 教授