代表者 : 船山 徹
骨粗しょう症性椎体骨折(いわゆる背骨の圧迫骨折)は高齢者の脆弱性骨折のうち発生頻度が最も高く、医療現場では施設を問わず日常的に生じる疾患です。急性期治療は手術などを行わない保存療法(安静臥床など)が原則ですが、これまでその効果を示す質の高いエビデンスが不足しており、診療ガイドラインはありません。一方、本骨折に対する画像検査の研究が近年進み、骨癒合不全になることを予測できる特徴的なMRI所見が明らかになっています。
本研究では、骨粗しょう症性椎体骨折の急性期に対する安静臥床の効果を検証するため、前向きコホート研究を実施しました。初期2週間の入院安静臥床の有無による6ヶ月後の治療成績を比較したところ、予後不良MRI所見を有する症例では、安静臥床を行うと手術療法が必要となる症例を有意に減らせることが明らかになりました。また、予後不良MRI所見の有無に関わらず、安静臥床により椎体圧潰と後弯変形の進行を有意に減弱できることが分かりました。合併症の発生については、安静臥床による差は見られませんでした。以上より、本骨折の急性期における初期2週間の限定的な安静臥床は、安全で高い治療効果が得られる保存療法であると結論付けられました。
本研究成果は、本骨折治療法としての保存療法の有効性に対する新たなエビデンスであり、診療ガイドラインの策定につながることが期待されます。今後さらに、保存療法における外固定装具の有無や装着期間に関するエビデンスの創出を目指します。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学 医学医療系
船山 徹 講師