救急外来の混雑を解消するため、医師が自宅へ赴いて診察する救急往診サービスの運用が多くの国で始まっています。日本でもファストドクター株式会社が2016年、時間外救急往診サービスの提供を始めました。その効果を科学的に評価し、効率的で安全な救急医療を社会に提供することを目的に、筑波大学は2019年からファストドクター社との共同研究を行っています。
ファストドクター社の救急往診サービスにおいては、患者さんから電話を受けると、主訴別に作成された「緊急度判定プロトコル」(総務省消防庁)に基づき、救急車は必要か不要か、病院受診は必要か不要かなどの緊急度判定を行い、6時間以内の受診が必要かつ通院困難と判断された患者さんの自宅に医師を派遣して救急往診を行います。
電話問診による緊急度判定の際、緊急度が実際よりも誤って低く見積もられた(アンダートリアージ) 患者さんは、病院受診が翌日になったり自宅での経過観察となったりするため、その後の病状が悪くなることがあります。従って、電話時点で緊急度が誤って低く見積もられそうな患者さんを予測し、適切な対応を行うことが、患者さんの回復にとって重要です。
そこで本研究チームでは、ファストドクター社を利用した患者さんの匿名データ(電話判定と実際に往診した際の状況を含む)を利用し、実際よりも緊急度が誤って低く見積もられそうな患者さんを予測する機械学習モデルを作成しました。
また、患者さんにどのような情報があると、実際よりも緊急度が誤って低く見積もられてしまうのかも調べました。その結果、年齢では高年齢、合併症では高血圧、糖尿病、脳梗塞、認知症、主訴では感冒症状、頭痛、アレルギー反応があると、実際よりも緊急度が誤って低く見積もられやすいということが分かりました。
本研究チームは今回作成したモデルをファストドクター社の救急往診サービスに導入し、アンダートリアージが減るかどうかの効果検証を行う予定です。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野/ヘルスサービス開発研究センター
田宮 菜奈子 教授
井口 竜太 准教授