菌類はさまざまな姿形をとることが知られており、その形態に応じて呼称が変わります。顕微鏡レベルの微小な菌糸を主体とするものは「カビ」と呼ばれます。いわゆる「キノコ」は、胞子をつくるために菌糸が集合してできた構造物で、生物学では子実体と言います。そして、出芽や分裂によって単細胞のまま増殖する菌類は「酵母」などと呼ばれています。
多くのキノコ類は担子菌門と呼ばれる菌類のグループに含まれます。その中でもシロキクラゲ目の仲間は、発育の過程(生活史)において キノコと酵母の両形態をとります(ちなみにシロキクラゲ目の一部の種は、中華料理で「銀耳」と称する不老長寿の食材とされています)。しかし、酵母としてはあまり認識されてきませんでした。また、一部の酵母は担子菌門に属すことが分かっていましたが、酵母から子実体を誘導するのは困難で、系統関係が未解明のままでした。これらのことから、シロキクラゲ目の分類学的研究は十分ではありませんでした。
本研究では、シロキクラゲ目の2属(SirobasidiumとSirotrema)を対象に、統合的な分類体系の構築を目指しました。具体的には、キノコとしての形態観察、酵母の状態における培養性状の検討、交配試験、DNA解析など多面的アプローチを組み合わせ、2属の生活史の各段階を観察しました。 その結果、Sirobasidium属の1種が新種と判明し、同属の別の1種を50年ぶりに再発見しました。また、Sirotrema属とされてきた1種は、別の属に分類することが妥当だと判断されました。
今後も同様のアプローチを進めることにより、シロキクラゲ類のみならず、モチ病菌など他の分類群においても「酵母」と「キノコ」または「カビ」の二つの面の情報を加味した新たな分類体系の整理が進むことが期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学生命環境系
出川 洋介 准教授
理化学研究所バイオリソース研究センター微生物材料開発室
遠藤 力也 研究員