岐阜県高山市で新種の恐竜卵殻化石を発見!〜小型肉食恐竜の存在が明らかに〜

代表者 : 田中 康平  

福井県や岐阜県など北陸地域に広く分布する中生代の地層「手取層群」は、多数の恐竜化石を産することで有名です。骨化石に加え、近年では恐竜の卵殻化石も報告されています。

卵殻化石は、当時の生態系を復元する上でとても重要です。どのような動物がその地域で巣づくりしていたかを解明することができるからです。小型の動物は骨がもろく、骨格が化石として残りにくいため、硬い卵殻化石の発見が、その動物の存在を示す確かな証拠として用いられます。近年、兵庫県や福井県などから相次いで恐竜の卵殻化石が報告されており、骨の化石だけからでは分からない、当時の生態系を知る手がかりとなっています。

手取層群の中でも岐阜県高山市荘川地域に分布する前期白亜紀の地層「大黒谷層」(約1億2900万年~1億3300万年前)では、恐竜類をはじめとする多様な脊椎動物の骨化石に加え、計9点の卵殻化石が見つかっていました。

本研究チームはこれらを調べ、カメ類の卵殻化石1種類と小型の獣脚類恐竜であるトロオドン科の卵殻化石1種類が含まれていることを突き止めました。恐竜の卵殻化石は網目状の表面模様が特徴的で、トロオドン科の他の卵殻化石には見られないため、新卵属・新卵種として「ラモプリズマトウーリトゥス・オオクライ」と命名しました(オオクライは荘川地域の卵殻化石の第一発見者である大倉正敏氏にちなみます)。殻の厚みから推定される卵は小さく(100g程度)、小型のトロオドン科が産んだものと考えられます。大黒谷層は、現在知られている国内の卵殻化石産地の中で最も古く、荘川地域の標本は日本最古の卵殻化石となります。

本研究によって、約1億3000万年前の日本(当時の大陸縁辺部)にトロオドン科が存在していたことが示唆されました。この時代のトロオドン科の標本はこれまで、アジアでは中国に限られていたため、その分布を知る上で重要な記録と言えます。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学生命環境系
田中 康平 助教

岐阜県博物館
髙津 翔平 古生物担当学芸員