代表者 : 善甫 啓一
人間は、視覚情報と聴覚情報をさまざまに処理しながら、対話相手を認識します。その際、錯覚が含まれることも知られています。本研究では、VR(仮想現実)空間において視覚と聴覚の情報を別々に制御し、対話相手に与える印象の変化を調べました。
会話をする時、話し声は、話し手の口元から空気を伝搬して聞き手の耳に届きます。聞き手は両耳から聞こえる音の音量差や時間差、耳たぶの反射などの情報に基づいて、その発生位置を認識します。通常、声の発生位置は口元の位置と一致して認識されますが、多少の位置的なズレを許容することもあり、例えば、腹話術では、人形の口を動かしながら腹話術師が声を出すと、人形が喋っていると錯覚します(腹話術効果)。
一方、我々は、他人に近づかれると不快に感じる領域であるパーソナルスペースを持っています。相手との関係性に応じてその範囲は変わりますが、物理的に近くに感じている人を親しいと錯覚することも知られています。
そこで、VR空間における対話実験を行いました。店舗販売員を想定した6種類のVRアバターをパーソナルスペース境界上に配置し、その話し声の位置を腹話術効果が有効な範囲で変化させた時の印象を、男女16人に対してアンケート調査しました。
その結果、話し声の位置が近づくほど、VRアバターに対して良い印象を持つ傾向が明らかになりました。また、話し声の接近とその位置のズレがもたらす「不気味の谷」のような現象も観測されました。このような知見を生かし、誰もが快適に感じるメタバースでのインタラクション手法の創生を目指しています。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学システム情報系
善甫 啓一 助教