代表者 : 柳沢 正史
睡眠は誰にでも必要ですが、なぜ眠らなければならないのかは現在でも謎です。本研究チームは、この謎を解く鍵となる酵素(SIK3)に注目していました。この酵素は睡眠に関わる脳内の反応の連鎖を調節し、睡眠の質と量を調整する分子のシグナルを形成します。しかし、SIK3がどのような分子と連鎖を作ることで睡眠を制御しているのか、どの細胞を介して睡眠の量や質を決めているのかは分かっていませんでした。本研究では、その連鎖(分子シグナル)の詳細と、この分子シグナルが調節する遺伝子群を、世界で初めて明らかにしました。
また、睡眠の質は大脳皮質の興奮性ニューロンが制御し、量は視床下部の興奮性ニューロンが制御することを見いだしました。ウイルスベクターを用いて、後天的に睡眠の量と質を変化させることで、この分子シグナルをさらに検証することにも成功しています。
睡眠は、心身の健康に不可欠であり、睡眠障害は精神疾患や糖尿病、心疾患、アルツハイマー病などの認知症のリスクを高め、日中の脳のパフォーマンスを低下させます。我が国では多くの国民が睡眠負債(睡眠不足に伴う心身の不調)を抱えていると言われており、睡眠の量と質を制御する仕組みの理解を通じて、新しい睡眠制御方法や睡眠障害治療法の開発に貢献することが期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)
柳沢 正史 教授・機構長
東邦大学大学院医学研究科/筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構
船戸 弘正 教授/客員教授