学長からのメッセージ

代表者 : 永田 恭介  

私たちを取り巻く環境は、激変するグローバル社会の中で、混乱の度合いを増しています。グローバル社会の中では、汚染物質や感染症、金融危機やテロリズムなどを例に取るまでもなく、問題は国境を超えて瞬く間に広がっていきます。エネルギーや環境の問題、産業と経済の活性化の問題など、解決すべき課題は地球規模で共有しなければならない問題であり、解決に向けては従来型の発想を越えたイノベーションが必要です。

筑波大学は、1872年に明治政府によって我が国で最初の高等教育機関として創立された師範学校から東京教育大学に至る歴史の上に、1973年に「新構想大学」として生まれ変わりました。本学に根ざす人材育成マインドは「師魂理才」と表現されています。師魂理才とは、親や先生のように人に接する心や人々をまとめる力を持ち、かつ合理的な問題解決の才能を持つことを意味しています。本学らしいコンセプトをグローバル社会に発生している課題と合わせて考え、本学のミッションは、師魂理才をもって、地球規模課題の解決と未来地球社会の創造に向けた知を創出するとともに、それを牽引するグローバル人材を育成することであると考えています。

本学は、あらゆる面で「開かれた大学」という建学の理念のもと、従来の観念に捉われない「柔軟な教育研究組織」と次代の求める「新しい大学の仕組み」を率先して実現するために、「不断の改革」を進めてきました。本学の前身である東京高等師範学校の校長であった嘉納治五郎氏は近代柔道の父として名を知られていますが、それ以上に重要なことは日本の高等教育を国際社会に開いた先駆者であったということです。また本学は総合大学としては他に例を見ない幅広い学問分野を有しており、専門分野を深化させながら、新たな学際・融合的な教育研究を積極的に開拓してきました。激動するグローバル社会においては大学の機能を再構築する必要がありますが、我々はそのための大学改革を先導する責任を自覚しています。

大学には、教育、研究、およびそれを基盤とした社会貢献が求められています。研究学園都市で新構想大学として出発した本学は、先端的な研究教育拠点、知の国際連携活動拠点としてはもとより、つくばの人材育成拠点として、産官学協同の拠点として発展してきました。本学は持てる力を結集して、地域と地域社会、国と国民、世界と人類の公益に資する開かれた大学として、常に新しいことに挑戦していきます。

本学は緑あふれる恵まれた自然環境の中にあり、多様な価値観を尊重する大学です。そして、IMAGINE THE FUTURE.という言葉に託した未来への想像力を発揮して、創造的であり、個性的であり、国際性豊かな知の拠点としてリーダーシップを発揮し、国際的に存在感のある大学として積極的に発言し、国際社会に貢献していきます。

筑波大学長  永田 恭介