代表者 : 飯田 崇史
シンチレータとは、電子などの荷電粒子がその内部を通ったときに光を放出する物質のことで、放出された光をシンチレーション光と呼びます。古くから放射線検出器として利用されており、最近では、中性子検出器として6Liを含むシンチレータが注目されています。6Liは熱中性子を吸収してアルファ線とトリチウムを放出しますが、これをノイズとなるガンマ線から分離できれば、中性子検出器として有望です。本研究グループは、Eu:LiCaIという結晶を用いた中性子検出器について、中性子とガンマ線などの粒子をより高精度に識別できる、シンチレータの発光波長の情報を用いた新しい粒子識別法を提案し、研究しています。
本研究では、Eu:LiCaIシンチレータを用いて、放射線の種類を変えた際にシンチレーション光の波長の違いをを調べました。その結果、中性子を照射したときとガンマ線と照射したときで、「フィルタ越しの光センサーの出力」と「フィルタ無しの光センサーの出力」との比が異なることを確認しました。これは中性子を照射したときは短い波長の光の割合が多いことを意味します。すなわち、波長情報による粒子識別技術の実証に初めて成功しました。この技術は、次世代の中性子検出器、さらにはさまざまな種類の放射線検出への応用が期待できます。今後、波長に違いが生じる理由について仮説の検証や、本技術を用いた放射線検出器の実用化を進めていくことを目指しており、これを応用した放射線の撮像技術を確立できれば、広く社会のイノベーション創出の基盤となることが期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学数理物質系
飯田 崇史 助教