非線形システムをよりよく表現できる疑似線形化法を提案〜新概念「平衡空間」の導入〜

代表者 : NGUYEN VAN TRIET  

自然現象に基づくほとんどの工学システムは物事の関係が比例関係ではない非線形です。非線形システムの安定性を解析し、これを制御する仕組みを設計することは、システム制御理論における重要な問題です。非線形システムの安定性を調べるには、リアプノフの線形化(間接法)が最も一般的で有用なアプローチの一つで、これにより、線形近似に基づいて平衡点周辺の局所安定性を調べ、よく知られている線形制御理論を適用することができます。しかしながら、単一の平衡点の安定性を調べるためには便利であるものの、平衡点が無数にあるシステムの場合、すべての平衡点を個別に調べるのは現実的ではありません。

本研究では、平衡点の概念を、無限の数の平衡点が存在するシステムに適応できる平衡空間と呼ばれるものに拡張しました。この平衡空間にリアプノフの線形化法を適用し、疑似線形化することで、非線形システムの線形表現を導き出すことができます。疑似線形化の平衡状態とその安定性は、元の非線形システムと同じであることが示されました。さらに、この疑似線形化法を用いて、実際に姿勢制御などに用いられているシステムについて、非線形連続時間モデルから離散時間モデルを導出しました。その結果、今回提案した疑似線形化により導出された離散時間モデルが、従来の方法で導出されたものより、サンプリング間隔が大きい場合でも、連続時間モデルの応答に近いことが分かりました。

これにより、低スペックの計算機、低計算コスト、低価格での制御システムの実装が可能になると期待されます。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学システム情報系
グエン ヴァン チエト 助教