海洋微生物の活性は深海ほど抑制されている〜高水圧下での微生物活性測定に成功〜

代表者 : 内海 真生  

深海の微生物群集は高圧環境にさらされています。陸上の多くの微生物は高圧を嫌いますが、深海では高圧を好んだり(好圧性)、高圧に耐えられる(耐圧性)微生物の存在が知られています。従来、海洋微生物の活性は、海水が採取された水深にかかわらず、調査船の船上に回収された後、船内の大気圧条件下で測定されていました。しかし、採水から船上への輸送、その後の船上培養で水圧が変化することから、深海微生物については、その活性を正確に評価できていない可能性が指摘されていました。

本研究では、新たに開発した現場微生物培養装置を用い、地球上の主要な海洋において、現場水圧下での微生物の活性を、有機炭素の消費速度として測定しました。その結果、微生物の活性は、深海の現場水圧下では船上大気圧下に比べて低く、水圧が高くなるほど抑制されていることが明らかになりました。また、深海1000~4000 mでは、微生物群集の約85%が耐圧性、約5%が好圧性であることが分かりました。残りの10%は、水圧が低い方が活性の高い微生物(圧力敏感性)で、これらの微生物が、船上への輸送とその後の培養時の減圧によって活性を取り戻し、時に100倍以上活性を上げることがあることを発見しました。

減圧下で極めて高い活性を持つ微生物が深海に存在することは、これまでの調査・測定が深海微生物群集の全体としての活性を過大評価していた可能性を強く示しており、今後の海洋炭素循環研究に大きな影響を与えると考えられます。

PDF資料
プレスリリース

研究代表者
筑波大学生命環境系
内海 真生 教授

筑波大学大学院生命環境科学研究科生命産業科学専攻博士後期課程
天野 千恵(研究当時、現 ウィーン大学 博士研究員)