急速に普及しつつある電気自動車の蓄電池を電力系統の安定運用に活用し、太陽光発電の大規模導入につなげることが期待されています。これまでは自宅での充電を対象とした研究が主に進められてきましたが、本研究では、電気自動車が普及した状況下で、自宅に充電器がない集合住宅の居住者など日常的に公共の急速充電器を利用するユーザーを想定しました。そして、急速充電器の利用時間帯を誘導できれば電力系統の安定運用につながることに着目し、その可能性を定量的に評価しました。
具体的には、電気自動車が従来のガソリン自動車と同じように利用されると仮定して急速充電器の利用タイミングを想定する数値モデルを、コンピューター上に構築しました。三つの要素(充電費用、充電頻度、充電にかかる時間)をさまざまに設定したシミュレーションを実施した結果、太陽光発電(PV)の電力が余る時間帯の利用料金を安く設定すれば、急速充電器の利用を、電力が不足しがちな平日の夜間から余裕のある休日の昼間へシフトできる可能性が示されました。
急速充電器の利用タイミングがこのように変われば、PV の出力抑制の機会が減り、PVの大規模導入に貢献することになります。
急速充電器の普及過程に応じたシミュレーションや、急速充電器導入ための費用対効果の分析などの情報を発信し、ユーザーに進んで協力してもらえる仕組みができれば、電気自動車の普及と相まって、多くの市民がカーボンニュートラルの実現に貢献する社会が到来すると期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学システム情報系
安芸 裕久 教授
掲載論文
【題名】 Grid Flexibility Provision by Optimization of Fast-Charging Demand of Battery Electric Vehicles
(電池式電気自動車の急速充電最適化による電力系統フレキシビリティ提供) 【掲載誌】 IEEE Transactions on Smart Grid 【DOI】 10.1109/TSG.2022.3219403