トップ柔道選手の睡眠の質はメンタルヘルスが鍵となる

代表者 : 武田 文  

日常的にハードなトレーニングをしているアスリートにとって、良質な睡眠の確保は、パフォーマンスを向上させるために欠かせません。このため、トップアスリートの睡眠の質に関する研究がいくつか進められてきましたが、トップ柔道選手の睡眠の質の状況や、それに関連する要因についてはほとんど明らかにされていませんでした。

本研究では、全日本柔道連盟の全面協力の下、全日本強化合宿に参加したトップ柔道選手86人のデータから、主観的な睡眠の質の状況とその関連要因(生活習慣・競技活動・競技ストレッサー・メンタルヘルス)について検討しました。

その結果、選手の約4割は主観的な睡眠の質が不良な状態にあることが明らかとなりました。これまでに報告された他のトップアスリート集団と比較して、同等か悪い傾向にあり、トップ柔道選手の睡眠対策が必要であることが示唆されました。また、睡眠の質を構成する七つの因子のうち、入眠時間、睡眠時間、日中覚醒困難の三つが、日本のトップアスリート集団(柔道を含む全ての競技のアジア大会代表候補)と比べて不良であることが分かりました。すなわち、寝付きが悪いこと、睡眠時間が短いこと、日中に強い眠気に襲われることが、主な問題であることが示唆されました。

さらに、トップ柔道選手の主観的な睡眠の質に関連する要因はメンタルヘルスのみでした。各種のアスリートを対象とした先行研究では、メンタルヘルス、生活習慣、競技活動、競技ストレッサーなど、さまざまな要因が睡眠の質と関連することが報告されていましたが、今回の結果はこれらとは異なるものでした。本研究の成果から、トップ柔道選手の睡眠の質を確保し、競技力のさらなる向上につなげるには、メンタルヘルスを良好な状態に保つことが鍵になると考えられます。

PDF資料
プレスリリース

研究代表者
筑波大学体育系
武田 文 教授

掲載論文
【題名】 Prevalence and risk factors of poor subjective sleep quality in elite judo athletes.
(エリート柔道選手における主観的な睡眠の質の低下の有病率とリスク要因) 【掲載誌】 Sleep and Biological Rhythms 【DOI】 10.1007/s41105-023-00444-6