代表者 : 林 悠
たくさん働いて疲れると眠くなる、というのは誰しもが経験する現象です。しかし、体の疲れがどのようにして睡眠を引き起こすのか、という仕組みはよく分かっていませんでした。
今回、本研究グループは、線虫を使った研究により、活発に働いた組織の細胞内の小胞体という構造に、不良品タンパク質がたまること(小胞体ストレス)が眠りのトリガーとなることを明らかにするとともに、その際に睡眠を促す分子としてeIF2αを特定しました。このような、細胞レベルでのタンパク質の品質管理と個体レベルでの睡眠の関係は、哺乳類のマウスでも共通に見いだされたことから、疲れた体と睡眠をつなぐメカニズムとして、幅広い動物で保有されていることが示唆されました。
本研究成果は、疲労と睡眠の理解に向けた重要な知見であり、新たな眠気の制御法や効率的な疲労回復法への応用が期待されます。また、さまざまな疾患や老化においても、小胞体ストレスの増加やeIF2αの働きの低下が起こることが知られており、今回明らかになったメカニズムは、疾患や老化と睡眠の関係の解明にもつながる可能性があります。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)/東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻
林 悠 教授