COVID-19への恐怖が看護職や病院事務職の心理的苦痛をもたらす

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大下(コロナ禍)におけるメンタルヘルスの悪化は社会的な問題となっており、COVID-19に罹患した患者の治療にあたる病院職員については特に悪化していたことが知られています。しかしながら国内で、COVID-19対応病院における職種別のメンタルヘルスの実態を検討した知見は限られており、とりわけコロナ禍に特有の要因であるCOVID-19への恐怖やレジリエンス(不利な状況を乗り越える回復力)との関連は分かっていませんでした。

本研究では、茨城県内でCOVID-19に対応した7病院の職員に対してオンラインアンケート調査を実施し、病院職員における職種別の心理的苦痛とCOVID-19への恐怖、レジリエンスとの関連を明らかにしました。アンケートでは性別や年代、職種といった情報に加えて、心理的苦痛、COVID-19への恐怖やレジリエンスを尋ねました。また、コロナ禍における病院でのさまざまな取り組みに関する認識についても尋ねました。これらを解析した結果、COVID-19への恐怖は看護職や事務職で強く、レジリエンスは医師で高いことが明らかになり、それらが看護職や事務職の心理的苦痛の強さを説明していると考えられました。そして、感染症対策について院内で相談できることや、心理的・感情的なサポートが提供されることが、COVID-19への恐怖の低さに関連していました。

感染拡大に対応する病院職員のメンタルヘルスケアにあたっては、幅広い支援体制が重要であり、その際には、心理的・感情的なサポートや業務内で生じた疑問を相談できるような枠組みを作ることが有効であると示唆されます。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学医学医療系
太刀川 弘和 教授
新井 哲明 教授
山懸 邦弘 教授

掲載論文
【題名】 Association of fear of COVID-19 and resilience with psychological distress among health care workers in hospitals responding to COVID-19: analysis of a cross-sectional study.
(COVID-19対応病院の医療従事者におけるCOVID-19への恐怖及びレジリエンスと心理的苦痛との関連:横断的研究の分析) 【掲載誌】 Frontiers in Psychiatry 【DOI】 10.3389/fpsyt.2023.1150374