手指巧緻性は、物を持ち運んだり、文字を書いたり、料理をしたり、ボトルの蓋を開けたりするなど、いわゆる手段的日常生活動作に直結する重要な身体機能の一つです。この機能は、加齢により低下し、とりわけ高齢者においては、認知機能とも関連することが知られています。本研究では、手指巧緻性の動作を繰り返す(トレーニングする)と認知機能を選択的に向上させることができるのではないかという仮説を立て、その検証を行いました。また、手指巧緻性動作のトレーニング中における脳への刺激(認知負荷)の有無についても確認しました。
茨城県内在住高齢者57名(平均年齢:73.6±6.1歳,女性割合:68.4%)を対象に、無作為でトレーニング群28名(平均年齢:72.9±5.6歳,女性割合:67.9%)と対照群29名(平均年齢:74.4±6.5歳,女性割合:69.0%)に振り分け、トレーニング群には12週間の手指巧緻性動作トレーニングを毎日行いました。その結果、トレーニングの難易度が高くなるほど、前頭前野の脳血流が増大することを確認され、認知機能の中でも実行機能が、コントロール群に比べて介入群で有意に改善されました。実行機能以外の認知機能においても、トレーニング群の方が大きい効果量を示しました。以上より、手指巧緻性動作トレーニングにより、高齢者の手指巧緻性と認知機能を改善できることが明らかになりました。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学体育系
大藏 倫博 教授
掲載論文
【題名】 Effects of home-based manual dexterity training on cognitive function among older adults: a randomized controlled trial.
(自宅で行う手指巧緻性トレーニングが高齢者の認知機能に及ぼす効果:ランダム化比較試験) 【掲載誌】 European Review of Aging and Physical Activity 【DOI】 10.1186/s11556-023-00319-2