体内時計が内外のリズムと同期する性質を簡便に評価する手法を提案

代表者 : 櫻井 武    中核研究者 : 平野 有沙  

多くの生物は日周期で生じる光や温度の環境変化に適応するため、概日時計(体内時計)を備えています。概日時計は、環境や生体内のリズムに合わせて自身の時刻(位相)を調整するため、光や温度などの同期刺激に応じて位相を変化させる性質を持ち、この応答は刺激を受けた際の位相によっても変化します。これを一つのグラフにまとめたものは位相応答曲線(PRC)と呼ばれ、概日時計と内外の同期刺激との関係を明らかにする上で重要な役割を果たします。しかしながら、PRCを取得するためは、刺激を与えた時刻ごとの応答を逐一計測する必要があり、多くの時間とコストがかかることが課題でした。

本研究では、植物に見られる概日時計の脱同期状態(細胞それぞれの概日時計の時刻がばらばらになった状態)における刺激応答(特異点応答、SR)を用いたPRC推定手法を哺乳類の概日時計に適用し、さまざまな刺激に対する概日時計の応答特性の評価を行いました。その結果、マウスやラットの培養細胞でもSRが観察されること、温度刺激や化学刺激などに対する概日時計のPRCを一度の計測から評価できることを示しました。さらに、マウスから得られた腎臓や肺などの組織切片を用いた計測により、組織によって同じ同期刺激でも応答の性質が異なることが分かりました。

本研究成果は、概日時計が環境や生体内の刺激に合わせて自身のリズムを調整するメカニズムの解明につながるとともに、時差ボケや概日リズム障害の治療薬の開発への応用も期待されます。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)/筑波大学医学医療系
櫻井 武 教授
平野 有沙 助教

掲載論文
【題名】 Singularity response reveals entrainment properties in mammalian circadian clock.
(特異点応答による哺乳類概日時計の同期特性の解明) 【掲載誌】 Nature communications 【DOI】 10.1038/s41467-023-38392-x