ミドリムシの仲間には、光合成をするものや細菌を捕食するものなど、さまざまな栄養様式のものが知られており、動物に寄生するものも報告されています。しかし、それらの報告は古いものに限られ、生態や分類に関する確実な情報は得られていませんでした。
本研究では、筑波大学近郊の水田から採集したカイミジンコやヒメウズムシなど4種の動物の体内から鞭毛虫を発見し、詳しく調査しました。体内に鞭毛虫が見られる動物は数日で死に至ることから、この鞭毛虫は寄生虫であることが示されました。この鞭毛虫は、動物体内では鞭毛を持たず活発な変形運動を行なっていましたが、動物体外に出ると鞭毛を伸ばし、遊泳しました。形態を電子顕微鏡などで観察したところ、ミドリムシ類の特徴を持つことが示されました。さらに4種の動物から単離した鞭毛虫のDNA比較により、これらは同種であることが示されました。また、系統解析の結果、この鞭毛虫は、光合成をするミドリムシの仲間に属することが明らかになりました。このことは、この鞭毛虫が、動物寄生性への進化の過程で、光合成能を二次的に失ったことを示しています。また、これまで報告されていた寄生性ミドリムシ類との比較から、今回発見された生物が新種であることが明らかとなり、Euglenaformis parasitica(和名: ツクバヤドリミドリムシ)と命名しました。
ツクバヤドリミドリムシは、水田に多く見られるカイミジンコに対して極めて高い感染率を示します。このような寄生性生物の生態を解明することは、水田生態系の理解にも大きく貢献するものと期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学生命環境系
中山 剛 准教授
青山学院中等部
加藤 孝一朗 教諭
掲載論文
【題名】 Taxonomy of a New Parasitic Euglenid, Euglenaformis parasitica sp. nov. (Euglenales, Euglenaceae) in Ostracods and Rhabdocoels.
(カイミジンコとヒメウズムシに寄生する新奇ユーグレナ類、Euglenaformis parasiticaの分類学的研究) 【掲載誌】 Protist 【DOI】 10.1016/j.protis.2023.125967