自宅等で家族を介護する人々(家族介護者)は、介護を行っていない人に比べて、より大きな心理的・身体的な問題を抱えています。従って、ヘルスケア従事者にとって、家族介護者のストレスに注意を向けることは重要です。これまでに、家族介護者の大半は自身の「かかりつけ医」による心理的なサポートを好意的に受け止めていることが報告されていますが、「かかりつけ医機能」が介護に伴うストレスに対して影響を与えうるかどうかを調べた研究はありませんでした。
そこで、本研究は、家族介護者のかかりつけ医機能と介護に伴うストレスとの関連性を検証しました。家族介護者に対して行ったアンケート調査のデータのうち、かかりつけ医を持っていた406人を対象に分析を行った結果、高いかかりつけ医機能を経験している家族介護者ほど、介護に伴うストレスが低いことが明らかになりました。また、かかりつけ医機能の要素のうち、継続性(全人的な人間関係に基づく診療を受けている)と、包括性(必要なときに幅広いケアや助言を受けられる)が高いほど、介護に伴うストレスは低いことが示されました。
かかりつけ医機能の強化が地域住民に恩恵をもたらすことを示した研究報告は増えつつあり、本研究結果は、家族介護者が抱えるストレスの低減という点においても、高いかかりつけ医機能が貢献しうる可能性を示唆しています。このことは、かかりつけ医機能の強化や、家族介護者支援の在り方を検討する上で、一つの資料になると考えられます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学医学医療系
舛本 祥一 講師
慶應義塾大学医学部医学教育統轄センター
春田 淳志 教授
掲載論文
【題名】 Association between family caregivers’ primary care experience when they report as patients and their stress related to caregiving: A pilot cross-sectional study
(家族介護者における患者としてのプライマリ・ケア経験とストレスとの関連) 【掲載誌】 Journal of General and Family Medicine 【DOI】 10.1002/jgf2.631