代表者 : 山田 洋一
現在、急速に研究開発が発展しつつある、有機太陽電池や有機発光ダイオードなどの有機エレクトロニクスでは、有機分子の電子の軌道の「かたち」(電子軌道)が非常に重要です。しかし、分子の電子軌道を可視化する方法は非常に限られています。特に、実空間や実時間での分子軌道の動的イメージングは、分子の構造変化や反応を調べる上では非常に重要ですが、困難でした。
本研究では、「電界放射顕微鏡」という技術を用いて、針先に吸着した有機半導体分子から放射された電子(電界放射)を投影すると、単一分子の電子軌道をイメージングできることを示しました。また、分子からの電界放射とその空間分布を詳細に分析したところ、この手法で可視化されているのは、超原子分子軌道(SAMO)と呼ばれる、分子の外側に空間的に広がった電子軌道である可能性を明らかにしました。
このような広がった電子軌道は、有機エレクトロニクスにおいて電子を輸送するのに適していることから、本研究グループでは、これまで、SAMOの詳細計測に取り組んでおり、今回の成果は、これらの結果に基づいたものです。本手法は、今後のSAMO研究に有用であるだけでなく、表面上の単一分子の拡散や反応などの新たな動的イメージング手法として応用できると期待されます。
PDF資料
プレスリリース
研究代表者
筑波大学数理物質系
山田 洋一 准教授
掲載論文
【題名】 Field emission angular distribution from single molecules
(単一分子からの電界放射角度分布) 【掲載誌】 Carbon 【DOI】 10.1016/j.carbon.2023.118215