新型コロナ感染症(COVID-19)に対するワクチンの集団接種が開始されるにあたり、政府は優先接種対象者を決める必要がありました。具体的には、医療従事者、65歳以上の高齢者、18歳以上64歳以下で基礎疾患を有する人などが優先的に接種を受けることができました。このような設定がその後のワクチン接種率にどのように影響を及ぼしたかは、評価されるべき課題です。
本研究では、集団接種開始直前の2021年2月、全国民(12歳未満の子どもなどを除く)がワクチンを接種できるようになった同年9~10月、集団接種が開始されてから約1年後の2022年2月の3時点にわたってインターネット調査を行い、接種状況や接種した理由の推移について、優先接種対象者と非対象者で層別化した解析を行いました。
すべての調査を通して追跡できた13,555人から得られたデータを解析した結果、新型コロナワクチンの接種率は、優先接種対象者(特に医療従事者と高齢者)で特に高く、非対象者では低かったことが分かりました。接種を希望する主な理由としては、自分自身や家族の感染を防ぐためが多く、接種を希望しない理由としては、副作用への懸念が多く挙げられました。
本研究結果は、今後、別の新興感染症が流行し、ワクチンの集団接種が必要になった際の施策立案に役立つ重要な資料になると考えられます。
PDF資料
プレスリリース
研究代表者
筑波大学医学医療系
堀 大介 助教
掲載論文
【題名】 The Impact of Priority Settings at the Start of COVID-19 Mass Vaccination on Subsequent Vaccine Uptake in Japan: One-Year Prospective Cohort Study
(新型コロナワクチン集団接種開始前の優先接種設定がその後の接種状況に及ぼした影響:一年間の前向きコホート研究) 【掲載誌】 JMIR Public Health and Surveillance 【DOI】 10.2196/42143