不眠症はさまざまな健康問題のリスクを高めるとされ、日本の成人の10%程度に認められる重要な問題です。不眠症には社会経済的な要因や生活習慣要因、仕事のストレスなどが関連していますが、近年注目されているのは幼少期の体験です。身体的、心理的、性的虐待やいじめ被害、家族機能不全の経験は、逆境的小児期体験(ACE)と呼ばれ、健康に悪影響を及ぼすことが知られています。しかしながら、ACEが労働者の不眠症に及ぼす影響についてはほとんど報告がありませんでした。
本研究チームは、茨城県つくば市の労働者を対象として、幼少期のいじめ被害や家庭内暴力(DV)被害が不眠症と関連しているかどうかを調査しました。その結果、アテネ不眠尺度(AIS)で不眠症と判定された者は2997名(41.8%)でした。いじめやDVの被害経験は不眠症と関連しており、特にDV被害経験は、経験した時期が多いほど不眠症のリスクが高くなりました。この傾向は、個人特性や職業要因、生活習慣の影響を考慮しても同様でした。
本研究から、幼少期のいじめやDV被害の経験が労働者の不眠症と関連することが示されました。このことは、産業医や保健師などの産業保健職にとって、日頃の活動でACEを持つ労働者を認識したときに、不眠症について注目することが重要であると考えられます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学医学医療系
笹原 信一朗 准教授
掲載論文
【題名】 Relationships Between Childhood Bullying/Domestic Violence Experience and Insomnia among Employees in Japan.
(日本の従業員における幼少期のいじめ/家庭内暴力経験と不眠との関係) 【掲載誌】 F1000Research 【DOI】 10.12688/f1000research.129340.2