脳波の特定の周波数で発生する「位相リセット」と呼ばれる現象の頻度が、日々変化するうつ気分を反映して変化することを見いだしました。これを用いると、脳波を1分間計測すればその時のうつ度(うつ気分の強さ)を推定可能できます。この手法はうつ病の早期発見などに役立つと考えられます。
うつ病は「こころの風邪」と言われることがあるほど一般的な病気ですが、自殺の大きな原因ともなる深刻な病気であり、早期の発見と治療が重要です。 脳波は計測が容易で装置も比較的安価です。このため、脳波からうつ気分の強さを手軽に測ることができれば、うつ病の早期発見・早期治療に非常に有用と考えられます。しかし、これまでそのような方法は知られていませんでした。
本研究では、実験参加者に毎日自宅で自身の脳波(安静閉眼状態)を1分間、2~4週間にわたって計測してもらい、その時のうつ気分の強さとの関係を調べました。その結果、多くの実験参加者について、異なる脳領域の脳波がそろう位相リセットという現象の発生頻度が、ある周波数ではうつ気分が強いほど増え、別の周波数では逆に減ることが分かりました。
この結果は、安静閉眼状態で脳波を1分間計測すれば、うつ気分の変化を客観的に測れることを示しており、今後うつ病の早期発見や新たな治療法の開発などにつながると期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学システム情報系
森田 昌彦 教授
掲載論文
【題名】 Brainwave activities reflecting depressed mood: a pilot study.
(うつ気分を反映する脳波活動に関するパイロット研究) 【掲載誌】 Scientific Reports 【DOI】 10.1038/s41598-023-40582-y