コロナ禍の妊娠延期の決定は女性のウェルビーイングの低下と強く関連する

代表者 : 松島 みどり  

新型コロナウイルスの感染拡大前に妊娠の意思があった既婚女性に対するアンケート調査の結果、約20%が感染拡大により妊娠を延期させており、そのような選択をした女性とウェルビーイングの低下に関連があることが分かりました。
新型コロナウイルス感染症のパンデミック期間(コロナ禍)には、私たちの生活のあらゆる面に変化が起こり、妊娠延期の決定についても例外ではありませんでした。これまでの研究では、不妊治療をしている女性において、若い頃に出産を遅らせた決断への後悔が、その後のウェルビーイングの低下と関連していることが明らかになっています。これらを踏まえ、今回、コロナ禍での妊娠延期の決定と女性のウェルビーイングとにどのような関連があるかに焦点を当て分析を行いました。

本研究では、日本におけるCOVID-19問題による社会・健康格差評価研究(JACSIS study)において2020年と2021年に収集された、全国オンラインアンケート調査のデータを使用しました。分析対象者は、感染拡大前に妊娠を希望していた18歳から50歳の既婚女性768人です。ウェルビーイングの指標として、孤独感、重度の心理的苦痛、および死にたい気持ち(自殺念慮)を用い、妊娠の決定とウェルビーイングの指標との関連を推定するとともに、各年のデータを個別に分析しました。

その結果、妊娠意向を持っていた既婚女性の約20%が、コロナ禍に妊娠を延期しており、重度の心理的苦痛や、コロナ禍以降に発生した孤独感、自殺念慮が、妊娠延期の決定と強く関連していることが分かりました。また、これらの関連は、2020年よりも2021年の方が強く見られました。このことは、コロナ禍といった危機時における女性のウェルビーイングの低下への懸念を示すものであり、社会全体として何らかの精神的ケアの仕組みを整える必要があると考えられます。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学人文社会系
松島 みどり 准教授

掲載論文
【題名】 Married women’s decision to delay childbearing, and loneliness, severe psychological distress, and suicidal ideation under crisis: online survey data analysis from 2020 to 2021.
(危機下での既婚女性の妊娠延期と、孤独感、重度の心理的苦痛、自殺念慮:2020年と2021年のオンライン調査データを用いた定量分析) 【掲載誌】 BMC Public Health 【DOI】 10.1186/s12889-023-16476-z