2016年から2020年までに全国で発生した交通事故のデータをもとに、高齢運転者が事故を起こすリスクを検証しました。その結果、事故リスクは、中年期以降、高齢になるにつれて高くなっていましたが、若年運転者と比べると、高齢運転者の事故リスクは低いことが分かりました。
高齢運転者には、免許更新時に高齢者講習と認知機能検査が義務付けられる一方で、免許返納が奨励されています。運転をやめれば、事故を起こすリスクはなくなりますが、移動手段が限られることで生活に支障を来し、健康を損なうリスクが生じます。従って、高齢運転者対策は、事故を起こすリスクと健康を損なうリスクの双方に配慮する必要があります。
本研究では、高齢運転者が事故を起こすリスクを検証するため、2016年から2020年までに全国で発生した交通事故のデータをもとに、免許保有者数当たりの事故件数(事故リスク)、事故件数当たりの死傷者数(死傷リスク)、死亡事故の各当事者が死者数に占める割合を、事故を起こした運転者の性別・年齢層ごとに比較分析しました。その結果、中年期以降、運転者の年齢が上がるにつれて、事故リスクは高くなっていましたが、若年運転者と比べると低く、衝突相手の死傷リスクは、事故を起こした運転者の年齢層間で大きな違いはありませんでした。死亡事故においては、運転者が高齢であるほど、単独事故により運転者自身が犠牲になることが多く、歩行者や自転車が犠牲になることは少ないことが分かりました。
本研究により、高齢運転者は自身の事故で自らが犠牲になる場合が多いものの、事故リスクは若年運転者と比べ低く、衝突相手の死傷リスクは他の年齢層と同等であることが示唆されました。高齢運転者の事故リスクを減らす努力とともに、高齢者が活動的な生活を送ることができるよう、運転継続や運転をやめたあとの支援が必要といえます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学医学医療系
市川 政雄 教授
掲載論文
【題名】 Revisiting older drivers’ risks of at-fault motor vehicle collisions in Japan
(日本における高齢運転者の事故リスクの再検討) 【掲載誌】 Journal of Epidemiology 【DOI】 10.2188/jea.JE20230217