グルーヴ感を生み出すリズム(グルーヴリズム、GR)に対して親和性が高い人は、脳の前頭前野の実行機能と前頭前野背外側部(DLPFC)の活性化が、通常の軽運動時よりも促進されることが分かりました。楽しくて効率的に脳機能向上効果を得られる「豊かな運動」の提案につながる成果です。
ノリの良い音楽を聴くと、ヒトは楽しさや興奮が増し、リズムに合わせて思わず身体を揺らしてしまいます。リズムに合わせて身体を動かしたくなるこの感覚は、グルーヴ感と呼ばれています。
有酸素運動は、軽い負荷(低強度)であっても脳の前頭前野背外側部(DLPFC)を刺激し、実行機能(注意・集中・判断など)を高めます。本研究チームは昨年、グルーヴ感を生み出すリズム(グルーヴリズム、GR)に対して親和性が高い人は、GRを聴くだけで前頭前野の実行機能が高まることを明らかにしました。そこで、GRを運動に合わせれば、運動の楽しさや脳への有益性をもっと引き出せるのではないかと考え、その効果を検討してきました。
本研究では、18~26歳の健康な男女48人の参加者に、GRに合わせた超低強度の有酸素運動を3分間実施してもらいました。その結果、運動中に「身体がリズムに共鳴している」と感じるとともに、「興奮が高まった」という参加者では、前頭前野の実行機能と左DLPFCの活性化が通常の超低強度運動時よりも促進されることが分かりました。音楽を嗜好品として考えれば、理にかなった結果かもしれません。
日本における運動習慣者の割合は3割弱とされており、誰もが自然に取り組める運動プログラムの開発が急務となっています。本研究成果に基づき、グルーヴリズムに合わせた運動の効果を検証することで、楽しくて意欲的かつ効率的に脳機能向上効果を得られる「豊かな運動」の提案につながることが期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学体育系/ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP)
征矢 英昭 教授
北海道医療大学看護福祉学部/全学教育推進センター
福家 健宗 助教
掲載論文
【題名】 Groove Rhythm Enhances Exercise Impact on Prefrontal Cortex Function in Groove Enjoyers.
(グルーヴリズムはgroove enjoyersに限り前頭前野機能に対する運動効果を促進する) 【掲載誌】 Neuroscience 【DOI】 10.1016/j.neuroscience.2023.08.039