企業従業員の労働パフォーマンス低下には抑うつ症状と不定愁訴が強く関係する

代表者 : 武田 文  

日本の企業従業員を対象とした分析で、労働パフォーマンスの低下には抑うつ症状が最も強く関係し、次いで食欲がない、よく眠れないなど不定愁訴が関係することが分かりました。また、男性は女性より健康問題と労働パフォーマンスの関係が強く、精神疾患や他の不定愁訴もその低下に関係していました。
日本では超少子高齢化の進行による生産年齢人口の減少に伴い、生産性の低下が大きな社会課題となっています。そのため企業では、従業員の健康を保ち、労働パフォーマンスの改善を目指す「健康経営」の観点からさまざまな取り組みが行われています。しかし、実際にどのような健康問題が日本の企業従業員の労働パフォーマンスに関係しているのか、それらが男女によりどう異なるのかについてはこれまで十分明らかにされていませんでした。

本研究では、日本の企業従業員(1万2526人、21~69歳)の健康診査、ストレスチェック、診療報酬明細書、労働パフォーマンスのデータを用いて、26の健康問題と労働パフォーマンスとの関係を性別に検討しました。その結果、男女とも九つの健康問題が労働パフォーマンスの低下に関係していることが分かりました。男女とも抑うつ症状が最も強く関係し、次いで食欲がない、よく眠れない、動悸や息切れといった不定愁訴が関係していました。さらに男性では、精神疾患の受療や他の不定愁訴も含めた14の健康問題が労働パフォーマンスに関係していました。また、健康問題と労働パフォーマンスの関係も女性より強いことが分かりました。

これらの結果から、ストレスチェックを活用して企業従業員のメンタルヘルスや不定愁訴、睡眠の改善に取り組むことが、労働パフォーマンス向上のための健康支援策として効果的だと考えられます。また、男性に対する重点支援として、長時間労働や仕事の過重負荷、職場の対人関係における葛藤など職場の心理社会的環境の改善を中心に検討する必要があると思われます。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学体育系
武田 文 教授

 

掲載論文
【題名】 Health problems related to presenteeism among Japanese employees.
(日本の企業従業員のプレゼンティーズムに関連する健康問題) 【掲載誌】 Journal of Occupational and Environmental Medicine 【DOI】 10.1097/JOM.0000000000002985