企業従業員の労働パフォーマンス低下には 睡眠による休息の不足が強く関係する

代表者 : 武田 文  

日本の企業従業員の労働パフォーマンスとさまざまな生活習慣の関係について分析した結果、労働パフォーマンス低下には男女とも睡眠による休息の不足が最も強く関係し、次いで運動習慣の欠如、就寝前の夕食摂取が関係することが分かりました。また、男性の方が多くの生活習慣が関係していました。
日本では、超少子高齢化の進行に伴って生産年齢人口が減少しており、生産性の向上をいかに図るかが大きな課題となっています。企業では、労働者の健康保持を通して労働パフォーマンスの改善を図る「健康経営」の一環として、喫煙、運動、食事などの生活習慣を改善する取り組みが行われています。しかし、実際にどのような生活習慣が労働パフォーマンスに関係するのか、またそれらに性差があるのかについては、十分に明らかにされていませんでした。

本研究では、日本の企業従業員(1万2476人、21~69歳)の健康診査、診療報酬明細書、労働パフォーマンスのデータを用いて、生活習慣(喫煙、運動、食事、飲酒、睡眠に関する11項目)と労働パフォーマンスとの関係を男女別に検討しました。その結果、男女ともに睡眠による休息の不足が最も強く労働パフォーマンスの低下に関係し、次いで運動習慣の欠如、就寝前の夕食が関係することが分かりました。さらに男性では、歩行速度が遅いこと、喫煙、朝食の欠食が、女性では食べる速度が速いことが、それぞれ労働パフォーマンスの低下と関係しており、男性の方がより多くの生活習慣が労働パフォーマンスと関係することが分かりました。

これらの結果から、企業従業員の労働パフォーマンス改善に向けた生活習慣改善の取り組みとしては、睡眠の改善、運動習慣の定着、適切な時間の夕食摂取に関する健康教育や職場環境の整備が重要であると考えられました。また、性差を踏まえた支援対策の検討も望まれます。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学体育系
武田 文 教授

掲載論文
【題名】 Relationships between lifestyle habits and presenteeism among Japanese employees. (日本の企業従業員における生活習慣とプレゼンティーズムとの関係) 【掲載誌】 Journal of Public Health 【DOI】 10.1007/s10389-023-02136-4