急性骨髄性白血病などに対する臍帯血移植の移植前処置において、抗がん剤のフルダラビンとアルキル化剤のメルファラン(140 mg/m2)の投与、および低用量全身放射線照射を組み合わせて用いた場合に、移植成績が最も優れることを、日本の移植レジストリデータを用いた解析により見いだしました。
同種造血幹細胞移植(同種移植)は、急性骨髄性白血病などの難治性造血器疾患に対して行われる強力な治療です。日本の同種移植件数の3分の1以上を占める臍帯血移植は、へその緒と胎盤の中の血液(臍帯血)に含まれる造血幹細胞を患者に移植するもので、適切なドナーがいない患者に対して適用されています。
同種移植では、移植の前に行われる「移植前処置」(抗がん剤や全身放射線照射を組み合わせた処置)と、移植された細胞の免疫反応による抗腫瘍効果が期待できます。近年、抗がん剤の一種であるフルダラビンを用いて毒性を減らした種々の前処置が開発され、より安全に同種移植が行われています。この際、アルキル化剤(メルファラン、ブスルファンなど)の投与や、低用量の全身放射線照射が併用されますが、臍帯血移植においてこれらの最適な組み合わせは不明でした。
本研究では、日本の造血幹細胞移植レジストリ(TRUMP®)から抽出した1395症例のデータを用いて、骨髄系腫瘍に対する臍帯血移植で多く用いられていた5種類のフルダラビン併用移植前処置を比較しました。その結果、フルダラビン、メルファラン(140 mg/m2)、低用量全身放射線照射を組み合わせて用いた場合、臍帯血移植後の再発や合併症による死亡が最も少なく、他のフルダラビン併用移植前処置と比べて移植後の生存率が優れていました。また、感染症による死亡が少ないことも分かりました。
臍帯血移植においてフルダラビンとアルキル化剤を適切な組み合わせで用いることで、今後の臍帯血移植の成績の向上が期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学医学医療系
千葉 滋 教授
栗田 尚樹 講師
掲載論文
【題名】 Comparison of fludarabine-based conditioning regimens in adult cord blood transplantation for myeloid malignancy: A retrospective, registry-based study.
(成人の骨髄系腫瘍に対する臍帯血移植における、フルダラビンを併用した移植前処置の比較:後方視的レジストリ解析) 【掲載誌】 American Journal of Hematology 【DOI】 10.1002/ajh.27172