極限環境から第3のRNAウイルス系統を発見

代表者 : 浦山 俊一  

高温酸性泉中の微生物から新奇RNAウイルスゲノムを発見しました。本発見は、これまでRNAウイルスが見つかっていなかった70-80度の高温環境でもRNAウイルスが生息すること、および、RNAウイルスを大別する既存の2つの界とは別の第3のRNAウイルス界が存在する可能性を示唆しています。

地球上では数十万種に及ぶRNAウイルスが知られており、その多くは微生物に寄生しています。しかし、RNAウイルスの多様性や進化、生態系における役割はまだ解明されていません。

 

本研究では、RNAウイルスのゲノム情報を精度良く捉える独自開発の検出手法を用い、雲仙および霧島の噴気地帯の高温酸性泉中に存在する、生命の共通祖先に近い高度好熱性の微生物集団から、全く新奇なRNAウイルスのゲノムを発見し、このRNAウイルスをHot spring RNA virus(HsRV)と命名しました。HsRVは、好熱好酸性バクテリアを宿主としていると推測され、本発見は、生命誕生の場とされる高温環境にもRNAウイルスが生息することを意味します。さらに、HsRVの遺伝子配列は、分類上、既知の2つのRNAウイルス界の配列とは大きく異なり、これらとは異なる第3のRNAウイルス界が存在する可能性も示しています。

 

今後、HsRVを保持する宿主株を単離・培養し、このウイルスの形状や生態を解明するとともに、今回用いた検出手法をさまざまな微生物や動植物に適用し、未知のRNAウイルスのさらなる探索を進めます。

 

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プレスリリース

研究代表者

筑波大学生命環境系
浦山 俊一 助教

国立研究開発法人海洋研究開発機構
布浦 拓郎 センター長代理・上席研究員

高知大学海洋コア国際研究所
奥村 知世 准教授

創価大学理工学部
黒沢 則夫 教授

掲載論文

【題名】
Double-stranded RNA sequencing reveals distinct riboviruses associated with thermoacidophilic bacteria from hot springs in Japan
(高温酸性温泉の微生物に由来する新たなRNAウイルスの発見)
【掲載誌】
Nature Microbiology
【DOI】
10.1038/s41564-023-01579-5