謎の腕振り原⽣⽣物「メテオラ」の特異な細胞構造と系統的位置を解明

代表者 : 白鳥 峻志  

腕のような突起を前後に振りながら移動する奇妙な原⽣⽣物「メテオラ」について詳細な解析を⾏いました。その結果、メテオラは複雑な細胞⾻格を持っており、真核⽣物の最も深い分岐の⼀つであると考えられている⽣物群のヘミマスチゴフォラと近縁であることが明らかになりました。
Meteora sporadica(メテオラ)は2002年に地中海の深海の堆積物中から発⾒された⼩型の単細胞性の真核⽣物(原⽣⽣物)です。細胞の前後左右に細⻑い突起を持ち、左右の突起を腕のように前後に振りながら底⾯を滑るように移動するという、既知の原⽣⽣物とは異なる特徴を有しています。しかし、細胞内部の微細構造や系統的な位置付けは分かっていませんでした。

本研究では、海洋堆積物中からメテオラの培養株を2株確⽴し、詳細な解析を⾏いました。微細構造の観察から、メテオラは複雑な細胞⾻格を持ち、前後左右の突起は細胞の中⼼に位置する複数の微⼩管形成中⼼(MTOC)から伸びる微⼩管によって⽀持されていることが分かりました。また、254遺伝 ⼦のアミノ酸配列を⽤いた⼤規模分⼦系統解析から、メテオラはこれまでに知られている真核⽣物の主要な系統(スーパーグループ)には含まれず、真核⽣物の最も深い分岐の⼀つと考えられている⽣物群のヘミマスチゴフォラと近縁であることが明らかになりました。

⾯⽩いことに、ヘミマスチゴフォラは多数の鞭⽑を持つ⼤型の原⽣⽣物によって構成されており、メテオラのような突起やMTOCは観察されていません。本研究は、ヘミマスチゴフォラ−メテオラ系統群の存在を⽰すとともに、本系統群が他のスーパーグループに匹敵する形態的多様性を有することを⽰唆しています。メテオラのような、研究があまり進んでいない原⽣⽣物について研究することは、真核⽣物の系統や多様性の解明のために重要です。

PDF資料
プレスリリース

研究代表者
筑波大学生命環境系
⽩⿃ 峻志 助教

掲載論文
【題名】 Meteora sporadica, a protist with incredible cell architecture, is related to Hemimastigophora.
(Meteora sporadicaは驚くべき細胞構造を持つ原⽣⽣物で、ヘミマスチゴフォラに近縁である。) 【掲載誌】 Current Biology 【DOI】 10.1016/j.cub.2023.12.032