ノンアルで飲酒減る 性差考えた対策必要

代表者 : 吉本 尚  

20歳を迎える若者にとっても、酒との上手な付き合い方を考える上で有益な情報と言えるかもしれない。 吉本尚准教授(医学医療系)と土橋祥平助教(体育系)らは、飲酒量が多めの人にノンアルコール飲料(アルコールテイスト飲料)を提供する実験を実施した。すると参加者の飲酒量が減少した。 また、参加者を男女別に分析した結果、飲酒の平均減少率に性差はなかったが、男性では飲酒日の飲酒量が減少し、女性では飲酒頻度が減少することが分かった。 ノンアル飲料の利用が飲酒量の低下につながることも、飲酒量の低下プロセスに性差があることも、世界で初めて示された成果だ。吉本准教授は「アルコールの過剰摂取による健康被害を抑えるには、性差を踏まえた対策が必要だ」と指摘する。 実験はアサヒビールとの共同研究で、週4回以上飲酒し、純アルコール摂取量が男性は1日40㌘以上、女性は20㌘以上の人を対象にした。この量を毎日飲むと、男女ともに厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」で生活習慣病のリスクが高まる量になる。なお、純アルコール20㌘は、日本酒1合またはビール中瓶1本に相当する。 実験では、応募者123人(男性54人、女性69人、平均年齢47・5歳)を無作為に2グループに分け、片方にだけノンアル飲料を4週間ごとに計3回、1回当たり最大72本(1本350㍉㍑)を無償提供。実際に飲むかどうかは本人の自由とし、アルコール飲料とノンアル飲料の摂取量を4週間ごとに報告してもらった。 その結果、ノンアル飲料の提供開始から12週間が経過した人の飲酒量は純アルコール量で1日平均11・5㌘減った。一方でノンアル飲料を1日平均で約314㍉㍑飲むようになった。提供をやめた8週間後も飲酒量減少は続いていた。 続いて、飲酒量の減少の仕方を男女別で比較したところ、減少率自体には性差がないことが分かった。ただし、その減り方のプロセスには性差があった。男性の飲酒頻度はあまり変わらないものの、飲酒日の飲酒量が有意に減少していた。これに対し女性は、飲酒日の飲酒量は減少しないものの、有意に飲酒頻度が減っていた。 男性はノンアル飲料をアルコール飲料と併用して摂取することが多いが、女性はノンアル飲料のみを摂取することが多いと考えられた。 アルコールの過剰摂取は健康リスクを高めるため、世界的な問題となっており、その対策は国連の持続可能な開発目標(SDGs)に定められている。 吉本准教授は、微アルコール飲料や炭酸水を使った同様の研究も計画中で、「飲酒量を減らす身近な方法として、さまざまなものを提案していきたい」と話している。(川上真生=社会学類3年)