親しい人の顔を学習する神経メカニズムを解明

代表者 : 國松 淳  

社会的な関わりの多い親しい人の顔が、物の価値を認識するのと同じ神経メカニズムによって、大脳基底核(特に線条体尾部)という脳の領域で学習されることを明らかにしました。
私たちは、食料を提供してくれる人や日常的に世話をしてくれる人に親しみを感じます。子供やペットにとって、こうした人々の顔を覚えることは生き延びるために重要です。これまでの研究から、長期の経験に基づく学習によって物とその価値を結びつけるには、脳の深部にある大脳基底核、特に線条体尾部が重要な役割を果たすことが知られています。しかし、このメカニズムが、日常生活のような、実験室環境とは異なる複雑な社会的状況でどのように機能するかは不明でした。

本研究では、サルに、親しい人と親しくない人の顔写真を見せ、その際の線条体尾部の神経活動を記録しました。その結果、物の価値を覚えるのと同じメカニズムで、親しい人の顔も脳に記憶されることが明らかになりました。

サルに対して、1年以上にわたって日常的に世話してくれている人と、会ったことのない人の顔写真を提示し、線条体尾部の神経活動を記録したところ、親しい顔には強く反応し、親しくない顔には弱く反応することが確認されました。また、同じ神経細胞が、物の価値の大小に対しても同様に反応することが確認されました。この神経細胞は、価値が高いものを素早く見つける行動にも関わっていることから、子供やペットが素早く親しい人を見つけることにも関与していると考えられます。

本研究成果は、脳が社会的な絆を形成し維持するメカニズムの理解を深めるものであり、線条体尾部を含む大脳基底核の障害による疾患(パーキンソン病など)の理解や治療にも役立つ可能性があります。

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プレスリリース

研究代表者
筑波大学医学医療系
國松 淳 助教

京都大学ヒト行動進化研究センター
網田 英敏 特任准教授
掲載論文
【題名】 Neuronal response of the primate striatum tail to face of socially familiar persons.
(社会的に親しい人物の顔に対する線条体尾部の神経応答) 【掲載誌】 iScience 【DOI】 10.1016/j.isci.2024.110043