「介護保険サービスを利用し始めた高齢者(65歳以上の新規要介護認定者)」という不均一な集団を、病気のパターンによって六つの集団に分類し、それぞれの集団の特徴や予後を明らかにしました。集団ごとに最適化した介入方法を開発すれば、医療介護サービスの質と効率の向上が期待できます。
高齢化が進む中、高齢者の医療介護サービスの質と効率の向上が重要な課題となっています。一方で、高齢者は、複数の病気を抱えていることが多く、その組み合わせも多様な不均一な(heterogenousな)集団であり、ひとくくりに捉えて適切な介入方法を検討することは難しいと考えられます。
本研究では、二つの市(茨城県つくば市・千葉県山武市)において新たに介護保険サービスが導入された65歳以上の人(新規要介護認定者)を対象に、22種類の背景疾患の情報をもとに教師なし機械学習の手法を用いて分類し、その分類(「臨床サブタイプ」)と予後の関連を検討しました。
つくば市のデータを分析した結果、六つの臨床サブタイプ(i. 筋骨格系疾患・感覚機能異常タイプ、ii. 心疾患タイプ、iii. 神経疾患タイプ、iv. 呼吸器疾患・悪性腫瘍タイプ、v. インスリン依存性糖尿病タイプ、vi. その他)が同定され、山武市のデータからもその分類を再現することができました。
予後に関しては、筋骨格系疾患・感覚機能異常タイプと比べて、心疾患タイプ、呼吸器疾患・悪性腫瘍タイプ、インスリン依存性糖尿病タイプは死亡のリスクが高いことが明らかとなりました。また、心疾患タイプ、呼吸器疾患・悪性腫瘍タイプ、その他タイプは介護度悪化と関連することが明らかになりました。また、心疾患タイプ、呼吸器疾患・悪性腫瘍タイプ、その他タイプは介護度悪化と関連することが明らかになりました。
本研究の結果は、要介護者本人のみならず、家族やケアに関わるスタッフにとっても重要な知見です。また本研究で同定した臨床サブタイプごとに最適化された介入方法を研究開発すれば、医療政策にも応用できる可能性があります。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学医学医療系/ヘルスサービス開発研究センター
田宮 菜奈子 教授
掲載論文
【題名】 Clinical subtypes of older adults starting long-term care in Japan and their association with prognoses: A data-driven cluster analysis
(日本で介護サービスの利用を開始した高齢者における臨床サブタイプと予後との関連:データ駆動型クラスター分析) 【掲載誌】 Scientific Reports 【DOI】 10.1038/s41598-024-65699-6