骨粗しょう性椎体骨折(背骨の圧迫骨折)後に日常生活の自立度が低下する危険因子を治療法別に解析しました。入院後早期に離床する保存療法ではX線で椎体の不安定性が大きいこと、2週の非荷重期間を設ける保存療法ではT2強調MRIの広範性低信号が、それぞれ異なる危険因子となっていました。
骨粗しょう症性椎体骨折(いわゆる背骨の圧迫骨折)は、高齢者の脆弱性骨折の中で最も発生頻度が高い疾患です。急性期の治療は手術などを行わない保存療法(安静と装具を用いたリハビリテーション)が原則で、最終目標は高齢者が自立した日常生活を維持することにあります。しかし、治療後に介助や車いすが必要になるなど、日常生活の自立度が低下してしまうことがよくあります。これまで自立度が低下する危険因子の報告はありましたが、保存療法の違いによるその違いは未解明でした。
本研究は急性期の骨粗しょう症性椎体骨折に対して2週の非荷重期間(安静臥床)を設ける保存療法の治療効果を検証した前向きコホート研究の事後解析で、治療後に日常生活の自立度が低下した例の危険因子を、多変量解析で抽出しました。
その結果、早期にベッドから離れて歩行訓練を開始する保存療法では、椎体不安定性(立位ないし座位と仰臥位でX線撮影した際に見られる骨折椎体の潰れ具合の差)が大きいことが危険因子となっていました。一方、2週間の非荷重期間を設ける保存療法では、MRI(磁気共鳴画像化装置)の画像(T2強調)で広範性低信号変化(通常は白く描出される椎体内部が黒く描出され、それが椎体内全体に及ぶ所見)が見られることが危険因子でした。これにより、保存療法が異なると自立度低下の危険因子も異なることが初めて明らかになりました。
医療現場では現在、急性期の本骨折に対してさまざまな保存療法が存在しています。本研究の成果は、本骨折の治療後に日常生活の自立度が低下してしまうかどうかを治療開始時に予測するための有用なエビデンスの一つとして役立つことが期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学医学医療系
船山 徹 講師
掲載論文
【題名】 Exploring factors affecting activities of daily living in patients with osteoporotic vertebral fractures managed conservatively: A post-hoc analysis of a prospective cohort study.
(骨粗しょう症性椎体骨折に対する保存療法後に日常生活の自立度が低下する危険因子) 【掲載誌】 Asian Spine Journal 【DOI】 10.31616/asj.2024.0091