労働スタイルの多様化に伴い、労働者の幸福感では、物質的な豊かさに加え心理的な充実も重要視されるようになりました。筑波研究学園都市の労働者に対するコホート調査のデータを解析に用い、労働者のそのようなウェルビーイングを包括的に評価する「労働者アバンダンス尺度(AIW)」を開発しました。
近年、労働スタイルの多様化が進んでいます。労働者の幸福感といえば、主に賃金や物質的な豊かさが重視されていましたが、最近では仕事へのモチベーションや人間関係などの精神的な豊かさも幸福感の指標として重視されるようになっています。
本研究では、労働者のそのような幸福感(ウェルビーイング)を包括的に評価する「労働者アバンダンス(豊かさ)尺度(AIW)」の開発を目指しました。そのために、複数の心理検査などを組み合わせたテストバッテリーをデザインし、その妥当性を検討しました。
テストバッテリーの解析には、筑波研究学園都市交流協議会に参加する研究機関や自治体、企業などの労働者を対象に実施した「つくば健康生成職域コホート調査(T-SOCS)」のデータを用いました。この調査は、労働者の日常生活、仕事の状況、メンタルヘルスなどを評価することが目的です。調査で判明した労働者のプレゼンティーイズム(健康問題を抱えつつ働いている状態)やうつ病に関する尺度と、新たにデザインしたテストバッテリーによって導かれたAIWを比較し、AIWは妥当であることが示されました。
本研究により、AIWは労働者のウェルビーイングを数値化して評価するのに有効な尺度であることが分かりました。AIWを活用すれば、労働者のウェルビーイングのより正確な把握が可能となり、より良い働き方や職場環境の改善につながることが期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学医学医療系
道喜 将太郎 助教
掲載論文
【題名】 Designing a test battery for workers’ well-being: the first wave of the Tsukuba Salutogenic Occupational Cohort Study
(労働者のウェルビーイング測定のためのテストバッテリーの開発:つくば健康生成職域コホート調査第一ウェーブより) 【掲載誌】 Environmental Health and Preventive Medicine 【DOI】 10.1265/ehpm.23-00372