リハビリテーション病棟に入院中の回復期脳卒中片麻痺患者について、運動学習能力を調整する能力(メタ学習能力)を計測したところ、入院中の日常生活活動能力の向上、すなわち運動能力の改善の程度と関係していることを見いだしました。
私たちは、意志決定や学習といった認知機能を内的に観測し、環境や文脈に応じて適切に調整するメタ認知機構を持っています。特に、学習能力を客観的に評価しプランニングを行うメタ学習能力は、教育学においても重要な研究対象です。最近、本研究グループでは、運動の学習に関しても、学習能力を適切に調整するメタ学習能力が存在することを明らかにしています。
さらに今回、この運動のメタ学習能力が、脳卒中後のリハビリテーション介入の効果量にも大きな影響を与えている可能性を発見しました。実験では、藤田医科大学病院のリハビリテーション病棟に入院している回復期脳卒中片麻痺患者を対象に、触覚を利用したハプティックインターフェイス装置を用いた短期のメタ学習実験を実施し、個々のメタ学習能力を計測しました。また、入院時と退院時に日常生活活動の自立度を評価し、その差を運動能力の改善の程度を表す指標として線形回帰分析を行ったところ、メタ学習効果と改善の指標に有意な相関があることが分かりました。これは、自らの学習能力を見つめプランニングするメタ学習能力が、リハビリテーションにとって重要な要素であることを示唆しています。本研究成果は、今後、個々のメタ学習能力を向上させることで運動能力の改善効率を高めるような、テーラーメイド・リハビリテーション治療の開発につながると期待されます。
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プレスリリース
研究代表者
筑波大学システム情報系
井澤 淳 准教授
藤田医科大学リハビリテーション医学
大高 洋平 教授
掲載論文
【題名】 Learning-to-learn as a metacognitive correlate of functional outcomes after stroke: a cohort study.
(脳卒中後の機能的成果に関連するメタ認知の相関としての学習力学習:コホート研究) 【掲載誌】 European journal of physical and rehabilitation medicine 【DOI】 10.23736/S1973-9087.24.08446-6